国際結婚をすれば、どちらかの祖国に住むことになります。一方にとっては「外国」になるわけで、家族や友人と離れ離れ。そうなると、家族との関わり合いや祖国への帰省をどうするか、など事前に話し合っておく必要が出てきます。
また、ハーフの子供を生むのが楽しみ!と期待に胸を膨らませる一方、仮に離婚してしまった場合、親権問題など大きなリスクに直面することも!
「国際結婚の壁③」では、「家族・帰省」「子供の教育」について取り上げていきます。
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文化・習慣・価値観の違いに関しては、できる限りに結婚する前に二人で話し合い、どう対処していくかについて事前に決めておきましょう。そうすることで、結婚してから「こんなはずではなかった」などと悩んだり、ストレスに感じることは少なくなるはずです。
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お互いの家族や帰省「祖国へは年に何回帰る?」
お互いの家族や帰省については、彼が日本に住む場合だけでなく、あなたが海外に住む場合でも直面する問題です。国際結婚ですから当然どちらかが異国の地に住むことになるため、お互いの家族との距離感や祖国に帰省する頻度について予め話し合っておくべきでしょう。
特に、お互いのスケジュール調整(特に夫婦で一緒に帰省する場合)や、フライトチケット等の費用の問題も出てくるので、実際に旅程を組む段階になってお互いにあたふたすることがないよう、事前に話し合っておけば備えあれば憂いなしというわけです。
さらに、ホームシック homesick という問題も絡んでくるため、彼やあなた自身がホームシックに対してどの程度の耐性があるかによって帰省や一時帰国の頻度も変わってくることでしょう。ホームシックになる原因は、両親・兄弟や友人に長期間会えないなどのほかに、母国の食事や生活環境が恋しくなる場合も含みます。特に、いずれかのパートナーが専業主婦(主夫)をする場合は社会との関わり合いや人間関係が希薄になる可能性も高く、孤独に感じたりホームシックにかかりやすくなります。
How often do you want to go back to your country? 「どのくらいの頻度で祖国に帰りたい?」
What do you think can prevent you from becoming homesick? 「ホームシック対策のために、私たちは何ができると思う?」
家族の距離感については、自分の家族も相手の家族と付き合うことになるということを意識しておきます。お互いの親戚や親同士の付き合いについても同じです。よって、相手の家族との付き合い方については事前に自分の家族とも話し合っておくとよいでしょう。
イギリス人の彼と結婚して日本に住んでいらっしゃる方の例ですが、イギリスからお義母さんが数週間にわたって自宅に泊まっていったそうです。日本の感覚では考えられない、とかなり当惑していました。また、カナダ人と結婚してカナダに住んでいらっしゃる方の例では、お義母さんからの連絡が頻繁にあるだけでなく、夫婦間のことについてもいろいろ口を挟むことがあって本人も参ってしまったという話も。その方は、ノイローゼ気味になってしまい日本の実家に2カ月ほど帰らざるを得なかったようです。アメリカではあまり聞かない話ですが、カナダの場合は家族同士の距離感がアメリカや日本よりも近い傾向にあるようです。
家族との距離感に関しては実際にこのような例もあるため、まずは夫婦で十分話し合ったうえで、お互いに納得できる着地点を予め探っておくとよいでしょう。
ハーフの子供を出産することのリスクと子供の教育方針
国際結婚に憧れる方の多くが「ハーフの子供が欲しい!」という期待が大きいのではないでしょうか? 特に白人とアジア人のミックスは、男の子の場合はイケメンになりやすく、女の子の場合はエキゾチックな可愛さが備わりやすいなどルックスにおけるアドバンテージは高いですよね。
ハーフの子供を出産して離婚してしまった場合のリスクとは?
一方、ハーフを出産することにおけるリスクも見逃せません。ここは国際結婚特有の乗り越えるべき大きな壁、といってよいでしょう。つまりは「もし離婚したら子供はどうなるのか?」ということ。最初からネガティブに考えてはいけないと思いますが、もし実際に離婚した場合はどういう状況が待ち受けているのか、少なくとも認識しておくべきでしょう。
まず、日本で子供を出産して離婚することになってしまった場合。彼が日本の雇用主から新たにビザサポートを受けない限り、彼のビザは離婚届を提出してから数年で失効することになります。そうなると、日本には合法的に滞在することができなくなるため帰国を余儀なくされます。
ここで問題になるのが子供の親権 custody です。子供の親権が彼にある場合、彼は子供を連れて母国に帰ることになるため、あなたは自由に子供と会うことができなくなります。
一方、子供の親権があなたにある場合は、逆に彼が自由に子供と会うことができなくなります。血のつながった実の親 biological parent であるにもかかわらず、自分の子供に自由に会えないという状況になってしまうわけです。
また、海外で子供を出産して離婚することになってしまった場合。特にアメリカの場合ですが、離婚した時点でグリーンカード green card(=アメリカ永住権 immigrant visa)を取得していなければ(または代わりに労働ビザなど他のビザを取得できなければ)、今度は逆にあなたが日本への帰国を余儀なくされます。
アメリカは日本と違って出生地主義を採用しているため、アメリカで生まれた子供は両親の人種がどうであれアメリカの国籍が与えられます。よって、子供の親権はそのまま彼が持つことになる可能性が高いです。そのような状況では、自分の子供と自由に会うことは難しくなります。
離婚までには至らないにしても、夫婦げんか等の不和が原因で子供を連れて日本に一時帰国する場合も要注意です。もし彼の同意なしに子供を連れて日本に帰国してしまうと、誘拐 abduction の罪に問われ逮捕されるリスクも出てきます。
国際結婚で離婚した場合の親権の問題については、こんな事例もあります。私の知り合いでアメリカ人の白人男性と結婚したメキシコ人女性のお話しです。
結婚して暫くして、彼女は自分の旦那さんがゲイ(正確にはバイセクシャル)であることが判明。その時点で彼女は彼と別れる決心をして子供もメキシコに連れて帰ると主張。しかし、旦那さんはこれを拒否し裁判になりました。長期化する裁判で弁護士費用もかさみ、結局彼女は子供を諦めてひとりでメキシコに帰国する羽目になってしまいました。
国際結婚をして子供を持つということは、仮に離婚することになった場合にはこういったリスクもあるのだと覚悟しておくべきでしょう。
子供の教育方針「子供はパブリックまたはプライベートスクールのどちらに通わせる?」
ここでは、海外に住んだ場合を前提にしています。子供の教育方針についても予め話し合っておくべき事項ですね。特に普通に公立のパブリックスクール public school に通わせるのか、私立のプライベートスクール private school (independent school ともいう)に通わせるかは、親の教育方針や財政状況次第です。
パブリックスクールとプライベートスクールの主な違いは、授業料、指導内容や教育の質といったところでしょうか。パブリックの場合は学校区と住んでいる場所によって自動的に通う学校が決まってきます。一方、プライベートスクールは居住地に関係なく学校を選択することができます。授業料についてはいうまでもなく、プライベートスクールの方が高くなります。
また、プライベートスクールの指導内容やカリキュラムについては学校独自で採用しているため、学校によって変わってきます。プライベートの方が少人数制のクラスになるため教育の質が必然的に高くなる、という考え方もあります。
一方、プライベートスクールに通ったからといって、その子供がパブリックスクールの子供よりも必ず優秀になるか、というとそれは違うと思います。子供の素養や先生の質、相性といった要素も考慮する必要があるといえます。
子供の教育方針「学習塾や習い事はどうする?」
子供の教育方針については、学習塾や習い事をどうするかということについても予め話し合っておくとよいですね。アメリカの場合は、日本のように大学受験準備のための学習塾が乱立していません。
一方、SAT や ACT 受験準備のスクールはちらほらあります。また、アメリカでは日本の公文の教室が KUMON として運営されています。
・SAT = Scholastic Assessment Test ・・・アメリカの大学受験のための能力評価試験。Critical Reading(読解力)、Writing(筆記)、Mathematics(数学)の3科目がある。
・ACT = American College Testing Program・・・SAT 同様、アメリカの大学受験のための学力を測る共通テスト。English(英語)、Reading(読解)、Writing(エッセイ)、Math(数学)、Science Reasoning(科学)の5科目がある。
興味深いのは、SAT や ACT のスクールや KUMON に通っている子供は、アジア系が多くて白人があまりいない印象。一方、スポーツ系や楽器の習い事は白人が多い印象です。地域や人種の人口分布の状況も影響していると思いますが、アジア系(特に中国人)とインド人の父兄は学業の優先度を高く置いている感じがしますね。
白人の父兄は学業よりもスポーツ系や音楽や芸術系のアクティビティに子供を参加させようとする意欲が感じ取れます。(注意: あくまでもわたしが住んでいるアメリカ国内地域での印象です。)
KUMON に関しては、わたしの娘が通っていましたので感想をシェアしたいと思います。
まず、KUMON が日本発祥の学習塾だからといって、日本のようなきめ細かい教育の質を期待すると裏切られることになるかもしれません。娘が通っていた教室は、たまたまインド人夫婦が運営していました。完全な個別指導ではないと理解はしていましたが、それにしてもあまり手をかけてくれなかったという印象でした。これといった効果もみられなかったのと、本人のやる気も薄れてしまっていたので結局やめてしまいました。
最後に、海外に居住する場合の日本語補習校についてです。
子供を日英バイリンガルに育てたい、日本人としてのアイデンティティも失ってほしくはないなどの考えで、現地の日本語補習校に通わせる親も少なくありません。ただ、日本語補習校は原則毎週土曜日のみ、1週間に1回のみが基本。現地校に同じ日本人クラスメートがいない限り、学校で日本語を話すことはほとんどないです。
両親共に日本人であれば、うちでも日本語を話す機会はありますが、国際結婚の場合は日本人であるあなたが積極的に日本語を話す機会を作らないと、子供の日本語力を維持するのは難しくなっていくでしょう。
わたしの娘は、途中で日本語補習校に行くのをやめてしまいました。週末は他の習い事のレッスンがありスケジュール調整ができなかったことが理由ですが、今は正直少し後悔しています。娘は現在高校生ですが、日本人の友人もほとんどいないため、家庭以外で日本語に触れる機会はほとんどありません。おそらく彼女の日本語力はせいぜい小学校高学年に満たないレベルかもしれません。現地アメリカでの彼女の主流言語 dominant language は間違いなく英語です。日本語よりも英語の方が上手にコミュニケーションができる、というわけです。
完全なバイリンガルに育てるには、やはり日々日本語を勉強する時間を確保し、日本語に触れる環境を積極的に作ってあげることが大事ですね。また、日本語を勉強したい、という動機付けも重要です。きっかけは日本のアニメやドラマであってもいいです。本人が積極的に日本語を勉強したい、と思うことが何よりも大切です。
学習塾や習い事については両親の教育方針も大事ですが、それよりも本人がやりたいことなのかどうか、続ける意欲があるかどうかなど本人の意思を尊重することも忘れてはならないと思います。
まとめ
1.祖国に帰省する頻度については、予め話し合っておく。
2.ホームシック対策について話し合っておく。
3.自分の家族も相手の家族と付き合うことになるということを意識しておく。
4.子供の教育方針として、パブリックスクールかプライベートスクールのどちらに通わせるか、話し合っておく。
5.子供の教育方針として、学習塾や習い事をどうするか話し合っておく。その場合は子供の意思も尊重する。
6.子供を完全なバイリンガルに育てたい場合は、毎日の生活の中で日本語を勉強する時間を確保し、日本語に触れる環境を積極的に作ってあげること。また動機付けも大事。
シリーズ「国際結婚の壁」の 第4弾は「宗教、人種差別、将来の夢」についてです。